2013年9月1日日曜日

D.キッサン『千歳ヲチコチ』1~3巻

ご無沙汰してます。

ブログに書くことが何も無かったわけではないんだけど、Twitterで上げるのに満足してこちらの方はすっかり放置してしまいました。
が、たまには長い記事も書かねばならんと一念発起して戻ってきました。

久々に感想記事です。

千歳ヲチコチ (1) (IDコミックス ZERO-SUMコミックス) 千歳ヲチコチ 2巻 (ZERO-SUMコミックス) 千歳ヲチコチ 3巻 (ZERO-SUMコミックス)

というのも、今更ながらハマった作品がありまして。
D.キッサン先生の平安ゆるゆる日常漫画『千歳ヲチコチ』がソレ。
先日4巻が出たばかりで、連載自体はずいぶん前に始まっているのですが(だから今更)。
今まで誌面連載だったのが7月からWeb版に移行したので、この機会に既刊分も集めてみました。
したら、何かストライクしたので、最近ひたすら何度も何度も読み返してます。

お話の筋は、ひょんなことでお互いの素性も知らぬまま文を交わしたチコと亨が、それぞれの日常を送る中でさまざまな出来事に関わることによって少しずつ近付いていく、というもの。

 

主人公の2人について少し解説すると、

チコは中流貴族のお姫様。屋敷の主として、女房の長山や乳母の仙河らと暮らしていますが、一般的な貴族の姫と比べると風変わりなのが玉に瑕(例、見慣れぬものは積極的に触りに行く。道具類はまず分解してみる、など)。女房の教育か本人の性質のせいか、貴婦人としては体力がある方で、走ることができる。これが新嘗祭の時に思わぬ活躍を見せることになります。

一方、上達部の息子の亨は、どこか世を悟ったところがある貴公子。元服して自動的に与えられる官位に恐縮して内舎人という下位の仕事に就いたり、家庭教師をつけられる身分にも関わらず大学に通ったりと、こちらも他の貴公子と比べると少しズレたところがある様子。でも、意外にいざという時の行動力はある青年です。

ちなみに、とある事情からチコは亨のことを「秋風の君」という女性だと誤解しています。

 

1巻は、2人が偶然に文を交わし、それぞれがお互いの文と相手に思いを馳せることから始まります。
季節は秋、新嘗祭が近付く中で、チコは宮仕えをしている親友の登姫から祭に誘われ、宮中に出仕していると思われる「秋風の君」に会えるかもしれないと期待して、文をしたためいざ宮中へ。

2巻は新嘗祭編。
突然五節の舞姫ひ扇を届ける任務を負い、無事果たして力尽きたチコと、慣れない宴会に翻弄された亨が几帳越しに接近するのですが、生憎お互い疲れて眠ってしまってます。その時、チコは持っていた「秋風の君」宛ての文を落としてしまい、悪夢にうなされる亨の手に渡ります。

3巻は年末編。
新嘗祭の夜に見た悪夢を夢解きしてもらった亨は、そこで得た文についての示唆を受けます。それを受けて、最初の文と新嘗祭で得た文は同じ人物が書いたものだと、しかも2通目は自分への返歌なのだと気付いた亨。
その一方、宮中では年末そして新年を控えているというのに、采配の要である典侍が行方不明になっていて……。

 

というのが、最新刊直前までの展開。
これらのあらすじ文は主筋に関するところですが、日常系漫画なので分量としては脇キャラとわいわいやってるシーンの方が多いです。あと、言い忘れましたがベースはコメディです。
が、前作『共鳴せよ!私立轟高校図書委員会』が、文系あるあるネタ満載の4コマギャグだったので、今作はほんのりにせよ恋愛要素が加わっているので心情描写が細やかで、主人公2人の心の動きに胸がキュンとする場面多し。

そういう場面におけるコマの割り方がすごく自分好みな漫画家さんだと感じました、D.キッサン先生。

視点の移動が巧みで、3巻までの中で特に好きなシーンはチコが扇を持って走るシーンと、亨が2通目の文が自分宛てだと気付くシーン。
前者は見開きの左右ぶち抜きで疾走するチコを描いているのですが、あっさりした絵柄だけど引きで見ることでスピード感が出てて好きです。
後者は、慌てて文箱を探る手元に寄せた視点の後、驚く亨の表情を大ゴマが描いているところに、彼の動揺が表れてて好きです。

そして、他の本作レビューでも触れられている通り、濃すぎる脇キャラ陣もみんな大好き!
チコの親友や女房たち、亨の学友に同僚に家族たち。宮中の方々などなど。
片っ端から挙げると結構な人数になるので省きますが、いずれもキャラ被りはしてないバランスの良さがあるし、描き分けがされるいるので読んでてややこしくなることはありません。

ただし、時代考証にこだわる人にはあまり向いていないと思います。
横文字が普通に出てくるし、チコの茶髪はともかく仙河や典侍の髪色はちょっとありえないし、リアル平安を求める人は気にかかる点が多いかも。
逆に、歴史物が苦手な人も高校までの古典の知識がうっすらあれば楽しんで読める内容かと。
むしろ私にとっては古典の知識より、ちりばめられた現代小ネタの方に分からんものがある。ターミネーターとか。
4巻の内容だけど、キョンシーネタも調べてようやく分かったし。
それでも、あまりにもマニアックなネタは無い(と思われる)し、分かるネタだけかいつまんで読んでも十分面白いです。

最新の4巻については、また別記事で。

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